料理とともに供する、日本茶|ザ・リッツ・カールトン福岡にて

料理とともに供する、日本茶|ザ・リッツ・カールトン福岡にて
静かに開いた、新しい日本茶の扉
— 料理とともに供する、日本茶というおもてなし —
私にとってそれは、これまでとはまったく異なる世界へと続く、
新しい扉が静かに開いた瞬間でした。

このたび、クラブ・デュ・タスキドール 会長
上柿元勝シェフのもと、
太田昌利シェフ、渡辺雄一郎シェフ、山中賢二シェフがご提供されるお料理に、
日本茶を一煎一煎お淹れするという、身の引き締まるほど貴重な機会を頂戴しました。
クラブ・デュ・タスキドールとは、
フランス料理を通して日本とフランスを「タスキ」で結び、
フランス料理の普及と技術の伝承を目的に活動されている会です。

会場は
ザ・リッツ・カールトン福岡「Viridis」
日程は 2025年12月18日・19日。

日本茶ペアリング

事前には、提供されるお料理の構成や味わいを伺い
九州各地の風土が育んだ数多くの魅力ある日本茶の中から、
その一皿一皿を損なわず寄り添えるかを私なりに想像して
お茶を慎重に選定、準備いたしました。
そして実際に、担当シェフの皆さまにお茶を味わっていただき、
それぞれの料理と同じ時間軸で楽しんでいただける
日本茶を選んでいただきました。
※限定コース・プライベートツアーのため、
準備時のお写真のみとなります。
【1日目】
ウェルカムドリンク
 スパークリング
 福岡県産 ほうじ茶(八女煎茶自家焙煎)
 福岡県茶商工組合
食中
 水出し緑茶
 長崎県産 蒸し製玉緑茶
 岡田商会
食後
 長崎県産 対馬紅茶
 つしま大石農園
【2日目】
海外からのお客様より
「温かい日本茶を、料理とともに楽しみたい」
というご要望をいただいたこともあり、
シェフの皆さま、ホテルのサービススタッフの皆さまと
何度もテイスティングとミーティングを重ねました。
提供温度、注ぐ量、提供のタイミング。
どれか一つ欠けても成立しない繊細な要素を、
現場で確実に形にするための綿密な打ち合わせでした。
ウェルカムドリンク
 スパークリング と HOT
 福岡県産 ほうじ茶(八女煎茶の自家焙煎)
 福岡県茶商工組合
アミューズ
 佐賀県産 嬉野釜炒ほうじ茶
 嬉野南部釜炒茶業組合
お魚料理
 佐賀県産 嬉野釜炒り茶
 嬉野南部釜炒茶業組合
お肉料理
 福岡県産 八女煎茶
 熊谷光玉園
 + 玄米オリジナルブレンド
食後
 長崎県産 対馬紅茶
 つしま大石農園
刻々と展開されていく料理の流れに合わせてお茶を淹れることは、
まさにLIVEの現場そのもの。
お客様の手元に届く“その瞬間”の温度にまで神経を行き届かせながら、
上柿元シェフがお話しされていた
**「お料理とのハーモニー」**
を常に意識し、一煎一煎に向き合いました。
急須で丁寧に抽出された日本茶が、
RIEDELのデカンタへと注がれるその佇まいは、
まるで一着の美しいドレスを纏ったかのよう。
グラスに注がれ、料理とともに楽しまれている様子を
扉の隙間から静かに見守りながら、
次のお茶、そしてお代わりのお茶の準備へ。
緊張と集中の連続の中で、
これまでにない数多くの経験を積ませていただきました。
帰り際、
お客様が手を取り
「とても楽しい時間だった」と声をかけてくださった瞬間、胸の奥から静かな安堵が広がったことを、今も鮮明に覚えています。
また別のお客様からは、
「日本茶とのペアリング、とても斬新だったわ」
というお言葉も頂戴しました。
アルコールを召し上がらない方、
穏やかで上質な時間を求める方にとって、
日本茶は新たな選択肢となり得る。
その可能性を、確かな手応えとして感じる時間でもありました。
同時に、
自分自身の技術の課題、
日本茶業界が抱える構造的な課題、
そしてこれを一つの“サービス”として成立させていくための問い。
多くのテーマと向き合う二日間でもありました。
それでもなお、
確かに感じた日本茶の可能性。
いつの日か、
レストランにおいて、ソムリエの隣に自然と
お茶を専門に淹れる技術者が立ち、
お客様の時間をより豊かにする一杯を提案する。
そんな風景が当たり前になる日が来るのかもしれません。
いうまでもなく今回準備させていただいたお茶は、
九州各地の自然と向き合い、
日々誠実に茶づくりに取り組まれている茶農家の皆さま、
そしてその価値を丁寧に磨き上げ、届けてくださる茶商の皆さまの尽きることのない努力の結晶です。
この場を借りて、心より感謝申し上げます。
皆さまの茶があったからこそ、この時間は成立しました。
仕事でありながら、
深い学びと示唆に満ちた、かけがえのない時間。
日本茶の課題と可能性、その両方を深く実感する二日間でした。
——
いつの日か、
ソムリエの隣で、
茶ムリエが自然に日本茶を淹れている。
そんな光景が、特別ではなくなる未来を思い描きながら。
2025年の暮れに出会った、
私にとっての新しい日本茶の世界でした。
謝辞
今回我々の提案した日本茶に真摯に向き合って下さり
それぞれのお料理とともに提供させていただく機会をくださったシェフの皆さまに
心からの敬意と感謝を申し上げます。
そして、いたらぬ我々を支えて現場の一瞬一瞬を
お客様の時間を最優先に考え抜いてくださった
ホテルのサービススタッフの皆さま、
誠にありがとうございました。
最後にこのような機会をお声かけくださった九州観光機構様
本当にありがとうございました。
これからも精進いたします。
株式会社 茶時遊空間
代表取締役 今村由美